買う工芸は、思い出も大事だが、実用性でありたい

旅先で出会う工芸品は、しばしば思い出と共に購入するものです。しかし最近、「思い出重視」ではなく「実用性重視」で工芸品を選びたいと強く感じるようになりました。

例①)思い出用として工芸品を買った場合、それが特別な体験だったとしても、気がつけばバッグの中や棚の奥にしまい込んでしまいがちです。手元にある安心感はあっても、日常の中で接する機会が少なく、存在そのものを忘れてしまうことすらあります。

例②)飾り用として買った場合も同様です。最初は部屋の一角に飾りますが、時間が経つにつれあまり目に入らない場所へと移されるか、埃をかぶっていく運命にあることが多いです。

例③)お土産用として購入すると、自分の手元には残らなかったり、食べ物などは消費して終わってしまったりします。あるいは、「どうせ人にあげるもの」という意識から、少し雑に扱ってしまう可能性もあると感じています。

では、なぜ「実用性」を大切にしたいのか。その理由は、日常的に使うことで、買った当時の想いを自然と思い出せるからです。これは心理学でいう「単純接触効果」に近いものがあります。繰り返し触れる・見ることで、旅先で感じた空気や人とのやりとりが、少しずつ日々の中に染み込んでいくのです。

旅では、人との関わりが一時的なものであることが多く、その深さを育てるのは難しいです。一方、日常では人との接点の幅広さはなかなか得られません。だからこそ、たまたま生まれたその接点に感謝し、その時間を思い出せるような「使う工芸品」を持ちたいのです。

そのように考えると、工芸品の細かいキズや汚れ、あるいは多少の不格好さなどは、むしろ味わい深いものとして受け止められるようになります。それよりも、頑丈で長く使えること、そして日常の中でふとした瞬間に「この器はあの時の……」と記憶を手繰り寄せられることの方が、ずっと価値があると感じています。

つまり、買う工芸品は「思い出の象徴」ではなく、「思い出を日常に織り込む手段」でありたいのです。

この思いに至った記事は以下です。

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