イラン旅行の感想

イラン総括 – 「世界の半分」と大都会テヘランで見つけた、変化と変わらぬ温かさ

2016年のシーラーズ滞在から9年。2度目となる今回のイラン渡航は、イスファハンとテヘランという二大都市を巡る旅となった。

かつてシーラーズで感じた、宗教色が強く、少し田舎で情緒あふれる「古き良きイラン」のイメージ。今回の旅は、良い意味でも悪い意味でも、その記憶をアップデートするものとなった。

「観光」よりも「都市の息吹」を感じる旅

今回のハイライトは、遺跡や建造物そのものよりも、そこで暮らす人々や街の空気感にあったと言える。

「世界の半分」と謳われるイスファハンのイマーム広場は、期待値が高すぎたせいか、あるいは冬の静けさのせいか、正直なところ「観光地として綺麗にまとまりすぎている」という印象が拭えなかった。むしろ印象に残ったのは、夜になると東京の繁華街のように若者で溢れかえる街のエネルギーだ。

テヘランもまた同様だった。ストライキで警察が溢れる中でも日常を崩さない市民の逞しさ。イスラム教の戒律がありながらも、ヒジャブの着用が選択的になりつつある「緩さ」。9年前には見えなかった、現代イランのリアルな変化を肌で感じることができた。

人懐っこさと、意外なほどの「自由」

中東の他国と比較しても、イランの人の良さは健在だった。

特に印象的だったのは、男女の距離感の変化だ。レバノンやオマーンでは男性旅行者が現地女性に話しかけると拒絶されることもあるが、今回のイランでは自然な会話が成立した。修士課程で学ぶ学生が夢を語り、ご年配の方が笑顔で迎えてくれる。知的好奇心が旺盛で、日本に対して好意的な人々との交流は、この旅一番の財産となった。

圧倒的なコスパと快適なメトロ

旅のインフラに関しては、驚くほど快適だったと言える。特にメトロの存在は大きい。どこまで乗っても一律8,000トマン(数十円)という破格の安さで、東西南北を網羅している。バスの難易度は高いが、メトロと徒歩で十分に都市を攻略できた。

物価も安く、米ドルを持っていれば宿泊から食事まで、かなり贅沢な選択ができる。経済制裁下にある国だが、旅行者としての視点では、このコストパフォーマンスの高さは大きな魅力だ。

「食」と「モノ」の正直な感想

食事に関しては「珍しい体験」の連続だった。味そのもので感動することは少なかったが、イスファハンの「ベルヤーニー」だけは別格だった。あの食感と味わいは、この旅の食のベストワンだ。

アルコールがない国だが、その分、テヘランでの「ティーハウス巡り」や、果汁を使った豊富なノンアルコールドリンクを楽しむ文化が面白かった。

一方で、工芸品に関しては少し期待外れだったかもしれない。直近で中央アジア(ウズベキスタン等)を訪れていたせいか、造形の緻密さや種類の豊富さという点で、少し物足りなさを感じてしまった。

結論

今回のイラン旅は、初めてイランを訪れる人には自信を持っておすすめできる。治安も良く、親日で、見どころも多い。

ただし、私のようにかつてシーラーズなどの「濃いイラン」を体験した人間からすると、イスファハンなどは少し綺麗になりすぎていると感じるかもしれない。それでも、夜の街で若者と語らい、テヘランの茶室で砂糖たっぷりの紅茶を飲む時間は、他では代えがたい豊かな体験だった。

9年の時を経て、イランは確実に都会化し、洗練され、そして少し自由になっていた。


Tehran

前回のイラン渡航は9年前。その時はテヘランはトランジットで9時間ほど過ごしただけだった。今回、しっかりと腰を据えてこの大都会を歩いてみると、古都とは全く違うエネルギーと、意外なほどの「緩さ」を感じることができた。

警察の群れと、動じない市民たち

テヘランの象徴ともいえるバザールは、やはり巨大で歩いているだけで楽しかった。しかし、タイミング悪くストライキに遭遇してしまったのは惜しまれる。

バザール周辺には警察がものすごい数で集結していた。物々しい雰囲気に圧倒されそうになったが、ふと地元の人々を見ると、誰も気にしていない。その様子はまるで「いつものこと」と言わんばかりだった。この緊張感と日常が同居している奇妙なバランスこそが、テヘランという街のリアルなのかもしれない。

ただ、ストライキの影響で店が14時には閉まってしまい、行動できる時間が限られてしまったのは残念だった。バザール自体は入り組んでいるものの、ある程度道が整理されていて迷うことはなかった。それは裏を返せば、迷い込むような発見や冒険の余地が少ないということでもあった。

「ティーハウス巡り」という贅沢

テヘランの滞在で特に気に入ったのが「ティーハウス」だ。日本でいう喫茶店巡りのように、気になったティーハウスに入っては一息つく時間が最高だった。

とにかく砂糖が多いのが特徴だが、不思議と甘すぎず、ちょうどよい味わいになる。タマリンドティーなど、日本では見かけない果実の風味や趣向を凝らした飲み物のレパートリーが豊富で、アルコールがないことを忘れさせてくれる面白さがあった。

食事に関しては、あえて2017年版の古いガイドブックを頼りに店を探した。「数年経っても生き残っている店なら、地元に根付いた本物の店だろう」という仮説は正解だったと思う。大都会の片隅で、昔ながらの店を探し当てるプロセス自体がエンターテインメントだった。味は「特別おいしい」というよりは、独特で見たこともない料理という点での満足度が高かった。

8,000トマンで巡る大都会

移動のストレスは皆無だった。鉄道が東西南北に張り巡らされており、どこまで乗っても一律8,000トマン(数十円)という安さ。メトロカードの購入も簡単で、外国人旅行者にとってこれほどありがたいインフラはない。

物価も全体的に安く、USドル払いであればかなり自由に行動できる。この経済的な気楽さが、街歩きのフットワークを軽くしてくれた。

「選択的」な空気感と工芸の不在

街を歩いていて感じたのは、イスラム教に対するスタンスが「選択的」であるということだ。特に女性に関しては、ヒジャブを付けていない人を電車や街中で多く見かけた。イスファハンや他の都市に比べ、宗教的な縛りから少し距離を置いた、大都会特有の自由な空気が漂っているように感じた。

一方で、工芸品に関しては少し物足りなさが残った。ウズベキスタンなど中央アジアを回った後だったからかもしれないが、造形の強さや種類の豊富さが弱く感じられた。バザール以外ではほとんど見かけず、生産拠点も見えないため、モノとしての手触りが薄かったのが正直なところだ。

総評

テヘランは、ストライキというハプニングすらも飲み込むような巨大な胃袋のような都市だった。

観光地としての「見どころ」を追うよりも、ティーハウスで砂糖たっぷりの紅茶を飲み、メトロで地元民に混ざり、古い食堂を探す。そんな生活に近い目線で歩くことが、この街を一番楽しめる方法なのかもしれない。

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Isfahan

イランを訪れるのは今回で2回目となる。前回は9年前の2016年。古都シーラーズに1週間滞在し、テヘランはトランジットのみという行程だった。

シーラーズは宗教色が強く、少し田舎で情緒のある古い街だった。その記憶を持って訪れたイスファハンは、テヘランに近い「都会」の発展を感じさせる街だった。

「世界の半分」への期待とギャップ

イスファハンといえば「世界の半分」という異名を持つ。シーラーズ滞在時にも「イスファハンは綺麗だぞ」と誰もが口を揃えていたため、期待値はかなり上がっていた。

しかし、実態としてはイマーム広場のみに印象が集中してしまった。その広場も、正直に言えば「イマイチ」だった。写真でよく見ていた、芝生でのんびりと食事を楽しむ現地の人々の姿──そんな光景を期待していたが、冬だったせいか静まり返っていた。想像よりもこぢんまりとしていて、広場を取り囲む商店も観光客向けに見せられている印象が拭えない。値札がなく値段がわからないため、買い物をするにも心理的なハードルが高かった。

ザヤンデ川の水が枯れていたのも残念だった。水があればもっと映えただろうが、これに関してはそこまで決定的なマイナスにはならなかった。

東京の繁華街のような夜と、若者のエネルギー

昼間の広場には少し拍子抜けしたが、夜になると街は別の顔を見せた。

広場の周囲は今どきの店が立ち並び、夜になるとライトアップされ、多くの人で賑わう。その様子はまるで東京の繁華街のようだった。欧米化しているようなキャッチーな店が多く、電飾が輝く中を若者たちが歩いている。

印象的だったのは、そこで出会った若者たちとの会話だ。ある修士課程の学生は、将来教鞭をとりたいと語ってくれた。イランの若者は夢を持って勉学に勤しんでいる人が多いように感じる。日本好きな人も多く、ご年配の方も含めて笑顔で接してくれるのが心地よかった。

また、私が外国人男性でありながら、現地の女性に話しかけても煙たがられることがなかったのも印象深い。レバノンやオマーンでは断られることもあったが、ここでは自然な会話が成立する。これは単に外国人が珍しいというだけではない、この街特有の空気感なのだろう。

食の正解は「ベルヤーニー」

イランの食べ物は珍しいものが多いが、正直なところ「抜群においしい」というものは少なかった。そんな中で一番のヒットだったのが「ベルヤーニー」だ。

訪れたのは「Azam Beryani」という店。韓国のサムギョプサルのようにパンで包んで食べるスタイルだと店員が教えてくれた。肉の脂っぽさが少なく、オレンジをかけたり、玉ねぎを入れたりして食べる。そのシャキシャキとした食感と斬新な味わいは、この旅一番の食体験だった。

アルコールは一切飲めなかったが、不満はなかった。その代わり、ノンアルコールビールや果汁を使った趣向を凝らした飲み物のレパートリーが豊富で、日本では見られない種類の多さが面白かった。

快適なインフラと驚きの物価

移動に関してはメトロが非常に便利だった。一律8,000トマン(約数十円)という安さで、外国人でもカード購入が簡単。本当はバスにも乗りたかったが難易度が高く断念したものの、メトロと徒歩で十分に街を楽しめた。

物価はかなり安く感じた。米ドル払いであれば、できることの幅が広がる。宿泊もダブルベッドで朝食付き、1泊10ドルという破格の値段だった。

総評

イスファハンは、イランが初めての人には自信を持って勧められる街だ。ただ、私のように以前シーラーズなどの「イランの深部」に触れたことがある人間からすると、少し綺麗にまとまりすぎているというか、見応えという点で物足りなさを感じるかもしれない。

それでも、夜の広場の賑わいや、夢を語る若者たちとの時間は、確かにこの街でしか味わえない熱量を持っていた。

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