旅先での楽しみのひとつに、マーケットや工芸品との出会いがあります。これまで、各地のマーケットや工芸品を巡る中で、多くの学びと発見を得てきました。そして今後も、マーケットと工芸に着目した旅をさらに深めていきたいと考えています。
最初のきっかけは、単純に「お土産を買いたい」という気持ちからでした。旅行先でその土地らしいものを手に入れたいという思いで、自然とマーケットや工芸品売り場を訪れるようになったのです。しかし今では、それが旅の目的のひとつになっています。つまり、「買うために見る」のではなく、「知りたいから見る」という姿勢に変わってきたのです。
たとえば、ガーナでは路上で売られていた鮮やかな布を購入しました。その派手な色合いや独特の柄は、今でもとても印象的で、買ってよかったと心から思える品です。布ひとつとっても、その国の気候や文化、日常が反映されており、ただの物ではない「記憶の手がかり」となってくれます。
また、直近で訪れたウズベキスタンやエチオピアでは、工芸品を見ることを主な目的のひとつとして、あえて首都を離れ、地方の街へ足を運ぼうとしました。地元の工芸が生まれた背景や、今も続く技法に直接触れることは、その土地の歴史や価値観を肌で感じる貴重な体験です。
旅を終えたあとに思い出すのは、やはり手元に残ったお土産の数々です。そして気づけば、それらの多くは工芸品であることがほとんどです。なぜそうなるのかを改めて考えてみると、いくつかの理由が浮かびます。
まず、マーケットには地元の人々の生活が凝縮されています。並ぶ野菜や果物、日用品からは、日々の食文化や風土を知ることができます。一方で工芸品は、その土地の歴史や慣習、気候や素材といった要素が結びつき、長い年月をかけて形成されてきた文化そのものです。たとえば、乾燥地帯では軽くて通気性のある素材を使った織物が生まれる傾向があります。実際、イランのマーケットでは、風通しがよく薄手で肌触りの良い布が多く並び、暑さを和らげるための工夫が感じられました。一方、寒冷地では保温性の高い工芸が発展してきました。たとえばモンゴルでは、厳しい寒さをしのぐためにフェルトを用いたアイテムが多く見られます。遊牧文化の中で羊を飼うことが一般的であるため、その羊毛を活かした工芸が自然と発達してきたのです。
このように、マーケットと工芸を通して見える「土地のリアル」は、ガイドブックには載っていない、その場所ならではの物語です。観光地をめぐるだけでは得られない、生きた文化との出会いがあります。
今後も、旅先でのマーケットや工芸品を手がかりに、その土地に根ざした文化や暮らしを深く感じ取っていきたいと思います。
そしてもし、これから旅を計画されている方がいるなら、ぜひ一度、マーケットを歩き、工芸品を手に取ってみてください。きっとそこに、その土地にしかない「出会い」が待っているはずです。