なぜ老夫婦は世界旅行に行けなかったのか、を考える。

本記事は、以下の記事に対して、「なぜ行動できなかったか」を考えるものです。

夢を「いつか」叶えるための準備ではなく、夢を人生の一部とするための試金石として、若いうちの体験を重視すべきという結論になりました。

考察1 考え始めが遅すぎる

72歳じゃなくて、55歳くらいでも良いくらい。体力気力が落ちるのが明確だから。

55歳という区切りは、加齢による不可逆的な身体的変化が顕著になる時期として、行動経済学や公衆衛生学の観点からも重要です。

  1. 身体能力の不可逆的低下
    基礎代謝と最大筋力は、一般的に30代から緩やかに低下し、50代後半からその低下速度が加速します。特に、海外旅行のような長時間の移動や不規則な食事、時差に対応する行動には心肺機能やストレス耐性が求められます。55歳は、まだこれらの機能が残存しているものの、積極的な維持努力をしないと急速に失われ始めるボーダーラインと捉えられます。
  2. 健康リスクの増大
    50代半ば以降は、生活習慣病や慢性疾患の発症リスクが統計的に大きく上昇します。健康診断の結果が急に悪化したり、持病の治療が始まることで、高額な保険や現地での医療体制への不安から、旅行そのものを断念せざるを得ない現実的な制約が増えます。
  3. 心理的な慣性の法則
    人は年齢を重ねるほど、現状維持を好む心理的な慣性の法則が強く働きます。新たな環境やリスクを受け入れる「気力」は、体力に先行して衰える傾向があります。55歳頃までに大きな決断や生活の変化を経験しておかないと、その後の行動力はさらに低下しやすいといえます。

「55歳」を行動計画のデッドラインとすることは、夢の実現に必要な最低限の身体的・精神的リソースを確保するための客観的な基準として妥当性が高いです。


考察2 時限を設けてないのがイマイチ

時限を設けないと、自分の気分、海外の時世に左右されるから。

目標設定理論において、期限設定 (Time-bound) は目標達成のための必須要素です。

  1. 目標管理の原則
    経営学や心理学で活用される目標設定の手法(SMART原則など)では、目標を達成可能なものとするために「いつまでにやるか」という期限を設けることが不可欠です。期限がないと、人間は行動を先延ばしにするプロクラスティネーションの傾向に打ち勝てず、「いつか」が「永遠に」実行されない事態に陥ります。
  2. 不確実性への対抗
    海外の時世、例えば国際情勢の悪化やパンデミックといった外部環境の不確実性は、個人の行動計画を容易に頓挫させます。時限を設けることで、その目標達成のために今できること(情報収集、資金準備、予防接種など)を逆算し、外部リスクが発生する前に可能な限り準備を前倒しする危機管理的な視点を持つことができます。期限設定は、外部要因に受動的に左右される状態から、能動的に計画を遂行する状態への転換を促します。

補足3 まず、小さく試すことをしたのか?

よく言われるのが、26歳までに海外に行かないと、その後の人生で海外に積極的にかかわる人生とならないといわれる。おそらく、感受性が26歳前後で変わることから、気力を必要とする旅の特性を表しているのだろうと思う。

「小さく試す」というスモールスタートの有効性と、若年期の経験が与える影響について、心理学や発達理論から以下が考えられます。

  1. スモールスタートの有効性
    行動経済学や心理学における習慣形成の理論では、目標を小さく分解し、心理的な抵抗の少ない初動から始めることが推奨されます。いきなり長期の海外旅行を計画するのではなく、近隣の異文化交流イベントへの参加、国内旅行、短期の海外旅行など、「小さく試す」ことで、自己効力感(自分にはできるという感覚)を高め、より大きな行動への動機づけとします。
  2. 若年期の感受性(臨界期・感受性期)
    26歳という具体的な年齢に普遍的な科学的根拠はありませんが、青年期後期から成人早期(概ね20代前半まで)は、アイデンティティ形成が最も活発な時期であり、発達心理学において感受性の窓が大きいとされます。この時期の異文化体験は、その後のキャリア選択、価値観、国際感覚といった人生の基盤に強い影響を与えやすいと考えられます。体力だけでなく、異文化を受け入れる柔軟性や適応能力が最も高い時期に行動することは、その後の人生の選択肢を広げる上で、非常に効果的です。

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